人材アセスメントを活用した組織開発コンサルティング、
企業研修ならHRD

戦略人事のこれまでとこれから
リーダーシップの権威とNo.1プラットフォーマーが考える人事の本質と進化

記事をシェアする

本セッションでは、「戦略人事のこれまでとこれから」をテーマに、日本企業における人事機能の進化と課題、そして今後の方向性について議論が展開されました。
合同会社THS経営組織研究所の小杉俊哉氏と、SmartHRの松栄友希氏を迎え、HRD代表取締役の韮原がモデレーターとして議論をリードしながら、人事の本質に踏み込む対話が行われました。

登壇者のご紹介

小杉 俊哉 氏 Kosugi Toshiya
合同会社THS経営組織研究所
代表社員

早稲田大学法学部卒業後、NEC入社。マサチューセッツ工科大学スローン経営大学大学院修士課程修了。マッキンゼー・アンド・カンパニー、ユニデン人事総務部長、アップルコンピュータ人事総務本部長を経て独立。
慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科准教授、慶應義塾大学大学院理工学研究科特任教授を歴任後、ビジネス・ブレークスルー大学大学院経営学研究科客員教授。専門は、人事、リーダーシップ、キャリア、組織開発。ふくおかフィナンシャルグループ・福岡銀行などの社外取締役を歴任し、ニッコー監査役、他数社の取締役・顧問を兼任。著書に『起業家のように企業で働く』『リーダーのように組織で働く』『リーダーシップ3.0』など。

松栄 友希 氏 Matsubae Yuki
株式会社SmartHR
タレントマネジメント事業本部 / VP

正社員転職サイト、アルバイト求人サイト、スカウトサービス、人材紹介、と採用領域を中心に幅広くHRを経験。「転職ドラフト」など、ProductManagerとして様々な新規事業を立ち上げる。友人とともに会社を立ち上げ人材サービスを展開。STORES株式会社にてSaaSプロダクトを経験後、2022年12月に株式会社SmartHR入社、タレントマネジメント領域を担当。2025年1月より現職。日本CPO協会理事。

韮原 祐介 Nirahara Yusuke/モデレーター
HRD株式会社 代表取締役

1983年、千葉県生まれ。慶應義塾大学商学部卒業後、アクセンチュアに新卒で入社。戦略策定、組織・人事改革、システム改革などに従事する。2012年~14年にかけてシンガポールに駐在し、ASEAN地域における日本企業の海外進出支援、組織・人事改革などを手掛けた。2015年ブレインパッドの経営企画部長に就任し、中期経営計画の立案と実行を主導するかたわら、同社過去最大の大型案件を責任者として実行。同社の経常利益12倍、時価総額20倍超の達成に貢献。専門領域は、組織・人事改革、機械学習などのデータサイエンスやデジタルテクノロジーの活用による経営改善、サイバー防衛戦略。東京大学非常勤講師、東進デジタルユニバーシティ講師などを歴任。一般社団法人情報処理学会情報規格調査会SC7/WG29小委員会アジャイルとDevOps(デブオプス)委員。2022年から現職。著書に『サイバー攻撃への抗体獲得法』『いちばんやさしい機械学習プロジェクトの教本』がある。

冒頭、韮原が「これまで多くのセッションがありましたが、ここからは“これから人事はどうあるべきか”を考える時間にしたい」と趣旨を示すと、小杉氏は「先進的な取り組みをされている企業は確かにある。今日の登壇者の皆さんはまさにそういう実践が伴っている方々だと感じました」と述べます。松栄氏も「一人ひとりの従業員のことをちゃんと考えているかどうか。それができている企業とできていない企業は明確に違います。今日のお話はどれも着実に実践を積み重ねているという印象を持ちました」と語り、現場起点の取り組みの重要性に言及しました。

日本企業の人事は、どこまで変わったのか

議論は、日本企業の人事の現状認識から始まります。小杉氏はこの30年を振り返り、「結論から言うと、あまり変わっていないというのが率直な感想です」と指摘します。先進的な企業が存在する一方で、多くの企業では依然として受け身の姿勢が残っているといいます。バックオフィスマインドセットから脱却できていない状況が続いており、「“何のためにやるのか”が置き去りになり、制度導入そのものが目的化しているケースも多い」と課題を提示しました。

松栄氏も現場の実態として、「結果が出ている企業は5%にも満たない印象です」と述べます。その背景として、経営からの要請と現場の反発の間で人事が板挟みとなり、「施策が“やりっぱなし”になっているケースが多い」と指摘しました。結果として、新たな制度を導入しても定着せず、現場に不信感が蓄積されるという悪循環が生じているといいます。

制度が機能しない理由――主体性と構造の問題

こうした状況に対し、小杉氏は「主体性の欠如」を本質的な課題として挙げます。「自分事として取り組んでいるかどうか。そこが弱いと、どんなに良いツールや制度を入れても機能しません」と述べ、タレントマネジメントの現場にも言及しました。システムを導入しても、「データを入力して終わってしまう」という状態にとどまり、意思決定に活用されていないケースが多いと指摘します。これは、人材に関する意思決定が依然として経験や属人的判断に依存していることを意味しており、戦略人事が経営に接続されていない一因ともいえます。

小杉氏自身も、社外取締役として関わる企業でこの課題に直面してきたと語ります。「新しい執行役員候補が上がってきても、なぜこの人なのか、他の候補との差は何かを説明できない。タレントマネジメントシステムを導入してもデータ入力で終わってしまう。そこでProfileXT®を活用して役員候補の特性を可視化し、比較・議論できる状態をつくることで対応してきた」と述べ、アセスメントが経営の意思決定を支える柱の一つとして機能していることを示しました。

データはあるのに使われない――意思決定の断絶

一方で松栄氏は、ツール設計の観点から補足します。「これまでの人事システムは、人事部門の効率化を目的に設計されてきました」としたうえで、「実際に変化を起こすのは現場の管理職や従業員です」と述べます。そのため、「従業員にとって使いやすく、自分にとって価値があると感じられる設計でなければ活用は進みません」と強調しました。

続いて議論は、今後の環境変化へと移ります。松栄氏は「この半年で特に増えているのが、AI活用と生産性向上のミッションです」と述べ、「とりあえず導入してみたが成果が出ないというケースも増えています」と現状を共有しました。その上で、「どこをシステムに任せ、どこを人が担うのかを明確にすることが重要です」と強調し、「人にしかできない判断や対話の領域にこそ、人事の価値がある」と指摘します。

小杉氏は長期的視点から、人材マネジメントの本質について語ります。「組織と個人の関係は、上下関係から対等な関係へと変わっています」と述べ、「企業は魅力的な機会を提供し続けなければ人材は離れていきます」と指摘しました。また、「人材マネジメントは連鎖で考える必要がある」と小杉氏は強調します。組織の理念・存在意義を起点に、ビジョン、リーダーシップ、組織設計、人事制度・施策、そして従業員の行動へと連鎖する構造が整合していなければ、どれだけ優れた制度を導入しても機能しない。「成果主義の失敗と言われたものの多くは、この連鎖を無視して制度だけを変えたことが原因でした」と語り、全体設計の整合性の重要性を指摘しました。

人事が担うべき役割――ウルリッチの4機能

今後の人事の役割について、小杉氏は「戦略人事は短期の成果創出だけではありません」と述べ、「中長期の人材育成と組織の持続性を担保することが重要です」と指摘します。特にその中長期の視点は、「人事でなければ推進できない領域」であると強調しました。

さらに小杉氏は、人事が担うべき4つの役割としてデイビッド・ウルリッチの整理を引用します。「戦略パートナー」「管理のエキスパート」「変革の推進者」「従業員のチャンピオン」の4つです。

「特に見落とされがちなのが変革の推進者と従業員のチャンピオンです。全社横串で変革を推進できるのは人事しかいない。そして従業員の声を制度に反映させなければ、誰もついてきません」と語り、人事機能の多面的な役割を示しました。

小さく始める――実行プロセスの再設計

施策の進め方については、松栄氏が実務的な示唆を提示します。「最初から全社一律で導入するのではなく、小さく始めて学習しながら広げていくことが重要です」と述べ、「一年かけて制度を作るのではなく、まず試して改善するスピードが求められています」と語りました。

さらに、「やるべきことを一つに絞る」重要性についても言及し、「あれもこれもではなく、一つをやり切ることが成果につながる」と指摘します。

これに対し小杉氏も、「全員を一度に変えようとしても変わりません」と補足します。「放っておいても自律的に動く人材は組織の2%程度しかいない。でも、その変わり者にアーリーアダプターが加わって20%程度に達すると、組織は変わり始める。まずその2%、15%にターゲットを絞って施策を打つことが、変革の流れをつくる第一歩です」と語り、変革を組織全体へと広げていくための具体的なアプローチを示しました。

戦略人事とは何か――意思決定を変える仕組みへ

最後に、小杉氏は「“何のためにやるのか”を常に問い続けてください」と述べ、施策の本質を見失わない重要性を強調しました。松栄氏も「この一年でやることを一つ決めてください」と語り、小さく始めて確実に成果を出すことの重要性を提示しました。

戦略人事とは、新たな制度を導入することではなく、人材に関する意思決定の質を高め続ける営みです。重要なのは、「何のためにやるのか」を起点に、小さく試し、学習しながら広げていくこと。その実行プロセスこそが、人事を経営に接続していきます。本セッションではその本質を、30年の知見と7万社におよぶ実践を背景に照らし出す時間となりました。


【HRD NeXT 2026各セッションレポート】 ※順次公開中

感情の科学でひらく、戦略人事の未来へ

SESSION01:初公開!Everything DiSC® カタリストの全貌

SESSION02:組織はこう変わる―Everything DiSC® カタリスト先行導入企業の実践知

SESSION03:ProfileXT®とCheckPoint 360°™が拓く次の人材戦略

SESSION04:パーパスを現場の行動へ―イオン九州「変革と挑戦」育成プログラムの実践知

SESSION05:経営戦略と人事を一本でつなぐ―エーザイの360°×DiSC® 実装ストーリー

SESSION06:戦略人事のこれまでとこれから

SESSION07:我が国の未来を見据えた、新たな組織・人材戦略の方向性


2026年05月20日

記事をシェアする

HRD NeXT 2025 ダイジェストムービー

動画を視聴する

企業研修、コンサルティング、
人材アセスメントの
ご依頼・お問い合わせはこちら

ご依頼・お問い合わせ 03-6777-7636

営業時間 平日 9:00 - 18:00

サービス事例や業務に役立つ資料を
ご用意しております

資料をダウンロード