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経営戦略と人事を一本でつなぐ―エーザイの360°×DiSCⓇ 実装ストーリー
内製化を前提にした共創設計が生んだ、組織シナジーとマネジメントの進化

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本セッションでは、エーザイ株式会社におけるCheckPoint 360°™(CP360)とEverything DiSC®(DiSC)を組み合わせたマネジメント変革の実践が紹介されました。
360度サーベイを「評価」ではなく「コミュニケーションツール」として再定義し、経営戦略と人事を分断させない仕組みの構築プロセスが語られました。(本レポートは2026年1月末時点の情報となります)

登壇者のご紹介

近藤 樹 氏 Kondo Tatsuki
エーザイ株式会社
グローバルHRマネジメント部 タレントディベロップメントグループ グループ長

1993年に新卒でエーザイ株式会社へ入社。入社以来、生産業務、研究開発業務、研究開発部門人事業務、営業部門人事業務、本社人財開発業務を担当。人事関連業務を担当し24年が経過、現在はグループ長として全社の人財開発・組織開発を担っている。「個のエナジーを組織シナジーへと効率的に転換し、社会的インパクト創出を最大化する」を我々のHRパーパスとして、社員のキャリアオーナーシップ醸成、相乗効果を生み出す組織づくりに尽力している。2025年度よりCP360°の導入に至ったが、組織長を評価するためのツールではなく、組織シナジーを高めるため360°方位のコミュニケーションを活性化するツールとして導入を決断した。

久保田 智行 Kubota Tomoyuki/モデレーター
HRD株式会社
DiSC事業部長 ディレクター

2007年にHRD株式会社に参画。組織・人材開発のコンサルタントとして、チーム形成やマネジメント力の強化、セールス力向上などのテーマで、 経営・事業リーダー、人事部門を支援している。現在は、Everything DiSC®アセスメント事業の責任者として、 最新の日本語版アセスメント開発とその普及を推進。アセスメントを活用した実践的な心理的安全性向上プログラムを開発するなど、 現場の課題に応じたソリューション提供を得意としている。

𠮷岡 志希 Yoshioka Shiki/モデレーター
HRD株式会社 プロファイルズ事業部
パフォーマンスコンサルタント

組織・人材開発コンサルタントとして、経営・人事部門および現場マネジメントの支援に従事。研修登壇や認定セミナーの講師も務め、「一人ひとりの可能性を引き出す」というHRDの理念を、実践的なプログラム設計と対話を通じて体現している。また、事業部を横断してアセスメントやサーベイを活用し、経営戦略の実現、企業文化の強化、リーダー育成など、多面的な組織課題の解決に取り組んでいる。

冒頭、HRDの久保田は「ヒューマンキャピタルレポートをご覧いただくと分かる通り、人を大事にする経営を実践されている企業です」と紹介し、「その実現の裏側にある具体的な取り組みをぜひ知っていただきたい」と本セッションの意義を示しました。

360度サーベイを「評価」から「対話」へ再定義する

近藤氏は導入の背景について、「何が起こるか分からない時代において、一対一のコミュニケーションだけではマネジメントは成立しません」と語ります。その上で、「多様な意見を取り入れ、それを内省し、行動変容につなげることが重要です」とし、CP360導入の目的を明確にしました。

一方で、360度サーベイに対する心理的ハードルについても率直に言及します。「重い、厳しいという印象を持つ方は多いと思います。私自身もそう感じていました」と述べます。導入前に他社の360度サーベイを受けた組織長が、率直な結果に涙を流しながら語っている姿を目にしたことも、近藤氏の問題意識を強めました。「360度を行動変容につなげるために、人を泣かせなければならないのか。そうじゃないはずだと思ったんです」。この経験が「ポジティブ&カジュアル」というコンセプトの出発点となり、人事評価とは完全に切り離したコミュニケーションツールとして設計する方針が固まりました。

「これは評価のためではなく、コミュニケーションのためのツールです」と明確に位置づけたことが、受容性を高める重要な設計となっています。

行動の背景を読み解く――DiSC®による内省の深化

さらに、今回の取り組みの中核となったのがDiSCの活用です。近藤氏はその意義について、「CP360の結果をデータとして見るだけでは、内省するのは非常に難しい」と指摘します。

「DiSCによって自分の行動スタイルを理解することで、“なぜこの結果なのか”が見えるようになります」。加えて、DiSCは単なる行動の違いではなく、その背景にある欲求・動機も捉えるため、自分にとって自然な振る舞いとそうでないものが明確になります。

「マネジャーは役者である」行動変容を促す設計思想

その上で提示されたのが、「マネジャーは役者である」という考え方です。

「得意な部分は自然にできる。しかしマネジャーはそれだけでは不十分です。不得手な部分は“演じる”ことで補えばいい」近藤氏自身も「自分のデータはむちゃくちゃひどかった。演じなければいけない部分がいっぱいあった」と笑いながら明かします。自らが受講者と同じ経験をしているからこそ、「人格が否定されているのではなく、役者として演じられていない部分があるだけ。それは努力で変えられる」というメッセージに説得力が生まれます。

「会社では役者として振る舞えばいい。その発想を持つことで、360度への心理的な受け止めがしやすくなり、行動変容のハードルが下がります」

この考え方により、360度サーベイの結果を「否定」としてではなく、「改善可能な行動」として受け止める土台が形成されたと思います。こうした取り組みは、マネジャー個人の成長にとどまらず、人材配置や組織の意思決定の質を高める基盤としても機能すると考えます。個人の特性と行動をデータとして可視化することで、人事判断の根拠が明確になり、経験則に依存しない意思決定が可能になるでしょう。それが同社の目指す「経営戦略と人事の接続」につながると期待しています。

実際、導入後の反応は非常に高いものとなりました。「弊社の組織長は約450名。2025年度はその約半数を対象に実施し、来年度に残りを完了する予定です。今回は約200名の受講者のうち、95%がアンケートに回答し、約9割が前向きに受け止めていました」と近藤氏は述べ、「“ポジティブ&カジュアル”というコンセプトは実現できたと考えています」と振り返ります。

さらに、「アクションプランについても約3分の2が“実行できる”と回答し、9割以上が前向きに可能性を見出していた」とし、行動変容への意欲の高さを示しました。

内製化と共創が生む、エーザイ流運用モデル

本取り組みの特徴は、研修と現場実装を一体化している点にもあります。ただし、アクションプランをメンバーの前で宣言することは、組織長にとっても簡単ではありません。そこで「マネジメント道場」の研修内に、伝え方をピア演習で練習する場が設けられています。「どう伝えるかを研修の中で一度やっておくことで、現場での宣言のハードルが下がる」と近藤氏は語ります。このような設計は、HRDとの対話を通じて磨き込まれたものであり、単なるツール導入ではなく、運用設計まで含めた共創によって実現されています。近藤氏は「研修でアクションプランを作るだけでなく、それを必ず現場で共有してほしいと伝えています」と説明します。

「自分はこういうデータを受けて、こう変わろうと思っている、とメンバーに宣言することで、そこからコミュニケーションが始まります」

このプロセスにより、360度サーベイは「受けて終わるもの」ではなく、「対話を生み出す起点」として機能します。

また、フォローアップ研修では、「実際にどのような変化があったか」「どのような課題があったか」を共有し合う場が設けられています。

「ワイワイと議論しながら、実践知を共有することで、継続的な学習が生まれています」と近藤氏は語ります。

この取り組みを内側から支えているのが、近藤氏自身の内製化への姿勢です。近藤氏はCheckPoint 360°™とDiSCの認定資格を自ら取得し、社内講師として研修に登壇しています。「本当の意味で自分事・会社事として伝えるには、社内の人間がやらなければ意味がない」という信念のもと、HRDとの共創を通じてエーザイ流にローカライズした運用モデルを構築してきました。

深層価値観と仕事が交わるとき、人は主体的に動き出す

さらに、同社の取り組みの根底には、「コミュニケーションを軸とした人的資本経営」があります。ヒューマンキャピタルレポートについても、「外部向けだけでなく、社員へのメッセージとして作っています」と説明します。

「社員が“自分たちの会社はこういう会社なんだ”と理解し、それを語れるようになることが重要」

この考え方は、エンプロイージャーニーの捉え方にもつながります。近藤氏は「エーザイでの経験は人生の一部に過ぎない」とした上で、「人生の目標と仕事をつなげることがエンゲージメントを高める」と述べました。

「まず“あなたの人生の目標は何か”を問い、その上で仕事と接続する。その発想が重要です」

さらに、「深層価値観と仕事がつながることで、人はより主体的に働けるようになります」と語り、ピープルマネジメントの本質に言及しました。

このような思想のもと、CP360とDiSCは単なるサーベイとアセスメントではなく、「対話と内省を促す仕組み」として機能しています。

最後に近藤氏は、「企業にとって重要なのは“人”であり、いかに成長し続けてもらうかです」と述べ、「社員を囲い込むのではなく、長くファンでいてもらうことが重要です」と語りました。

「アルムナイも含めて、企業との関係性をどう築くかがこれからのテーマです」。こうした価値観に基づくマネジメントを実現するためにも、CP360とDiSCを起点とした対話の仕組みが重要な役割を果たしています。

本セッションは、360度サーベイを「評価」から「対話」へと転換し、個人の内省と組織シナジーを生み出し、同時に促進する実践例として位置づけられます。CP360とDiSCを組み合わせ、「ポジティブ&カジュアル」というコンセプトを貫いた対話を起点としたマネジメント変革の設計は、人的資本経営を推進する企業にとって具体的な示唆を提供するものといえます。


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エーザイ株式会社様へのUser’s Voiceインタビューおよび、導入事例ページを公開しています。


【HRD NeXT 2026各セッションレポート】 ※順次公開中

感情の科学でひらく、戦略人事の未来へ

SESSION01:初公開!Everything DiSC® カタリストの全貌

SESSION02:組織はこう変わる―Everything DiSC® カタリスト先行導入企業の実践知

SESSION03:ProfileXT®とCheckPoint 360°™が拓く次の人材戦略

SESSION04:パーパスを現場の行動へ―イオン九州「変革と挑戦」育成プログラムの実践知

SESSION05:経営戦略と人事を一本でつなぐ―エーザイの360°×DiSC® 実装ストーリー

SESSION06:戦略人事のこれまでとこれから

SESSION07:我が国の未来を見据えた、新たな組織・人材戦略の方向性


2026年06月11日

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