不確実性下におけるモチベーションの意外な真実
原文:The Surprising Truth About Motivation During Uncertainty
アラインメント(組織内の認識の一致)。
企業の現場では頻繁に使われる言葉ですが、その実現はあらゆる組織における重要な目標の一つです。にもかかわらず、多くの場合それは「実現できれば理想的な状態」あるいは「余裕があれば目指すもの」として扱われがちです。とりわけ不確実性の高い状況では、高リスク・高リターンの施策が優先される傾向にあり、アラインメントは後回しにされやすくなります。
2026年のように変動の激しい環境においては、十分なアラインメントが確保されないまま意思決定が進むことも珍しくありません。いわゆる「飛行しながら機体を組み立てる(building the plane while flying it)」という状況です。もちろん、まずは動き出すことが必要な局面もあります。しかし、Wiley Workplace Intelligenceの最新調査が示しているのは、アラインメントは単なる理想論ではないという事実です。
不確実な時代において、モチベーションを支える中核的な要因――それがアラインメントです。
アラインメントとモチベーションの関係
職場におけるモチベーションは、しばしば「明確さ」「報酬」「組織の安定性」といった要素によって左右されるものと捉えられがちです。しかし、不確実性が高まる状況では、これらの前提は必ずしも成り立たなくなります。パフォーマンスを支えるのは、単なる報酬ではなく、「自分の仕事がなぜ重要なのか」とのつながりを実感できているかどうかです。
私たちは1,347名を対象に調査を実施しました。その結果、不確実な環境下においてモチベーションは失われるのではなく、「質が変化する」ことが明らかになりました。従業員は引き続き職務に取り組み、貢献し、条件が整えば高い成果を上げることも可能です。ただし、その動機は、リーダーが想定しているものとは異なる場合があります。
この変化の中心にあるのが、リーダーによるコミュニケーションと、従業員の日常的な業務体験との間に生じるギャップの拡大です。現場での実感とかけ離れた発信がなされていると従業員が感じたとき、モチベーションは急速に低下します。
実際、モチベーション低下を最も強く予測する要因は「不確実さ」そのものではなく、「つながりの欠如」です。リーダーが現実から乖離していると感じられる場合、優先順位が説明なく変更される場合、あるいはコミュニケーションが途絶える場合、従業員はそれを「自分の努力が認識されていない」「評価されていない」というシグナルとして受け取ります。
ただし、これは単純なエンゲージメント低下の問題ではありません。むしろ、モチベーションの源泉が変化していると捉えるべき現象です。
不確実性下における主要なモチベーション要因
将来の見通しが不透明な状況は、リーダーにとっても現場の従業員にとっても容易なものではありません。優先順位や方針が変わり続け、不安定な経済環境の中で意思決定を迫られることで、組織は本来の許容範囲を超えるスピードと柔軟性を求められる状態に置かれます。
こうした不安定さに伴う負荷があるにもかかわらず、調査から明らかになったのは、従業員のモチベーションは依然として高い水準に保たれているという点です。ただし、その支えとなっているのは、従来の外発的な要因ではなく、より内発的で関係性に根ざした要因へと移行しています。
不確実性下における主なモチベーション要因(上位3つ)

1.学習と成長の機会

2.チームの成果へのコミットメント

3.自分の仕事が価値を生んでいるという実感
さらに、自律性が極めて重要な役割を果たしていることも示されました。従業員の90%が、「仕事の進め方に対する裁量を持っていること」がモチベーションの維持につながっていると回答しています。リーダーの立場からは、生産性を高めるために管理や統制を強めるという判断に傾きがちですが、調査結果はそれとは逆の傾向を示しています。従業員が信頼されていると感じるほど、パフォーマンスに対する意欲は高まるのです。

従業員の90%が、「仕事の進め方に対する裁量があること」がモチベーションの維持につながると回答しています
これらの結果が示すのは一貫した傾向です。従業員は、他者への責任を感じているとき、自身の成長や進展を実感できているとき、そして業務遂行に対する主体的な関与を持てているときに、高いパフォーマンスを維持します。モチベーションは、外部からの指示に依存するものから、内面的なコミットメントへと重心を移しています。
これらのモチベーション要因には共通点があります。それは「主体性の発揮(エンパワーメント)」の重要性を強化している点です。従業員の主体性を尊重することは、不確実性が高い状況においても、彼らの判断や努力、経験が価値あるものとして認識されているという明確なメッセージとなります。
リーダーと現場の乖離は、モチベーション低下の主要因となる
リーダーによる一貫したコミュニケーションは、多くの観点で重要です。しかし本調査が示したのは、モチベーションとの最も強い相関を持つのは「コミュニケーションの量」ではなく、「アラインメント(認識の一致)」であるという点です。これはコミュニケーションの重要性を否定するものではなく、それだけでは十分ではないことを意味しています。リーダーの発信が現場の実感と整合していなければ、たとえ頻度が高くても、その内容は空疎に受け取られかねません。

リーダーが従業員の実際の業務体験と乖離していると認識された場合、93%がモチベーションの低下すると回答しています
アラインメントの欠如がもたらす影響は小さくありません。リーダーが現場の実態から乖離していると認識された場合、93%がモチベーションの低下を報告しています。優先順位が説明なく変更された場合は89%、追加的な努力が認識されない場合も同様に89%が低下を実感しています。また、コミュニケーションが途絶えた場合には、83%がエンゲージメントの低下を報告しています。
これらは些細な変化ではなく、組織のあり方そのものを左右する水準の影響です。従業員は不確実性そのものに反応しているのではなく、それがどのようにマネジメントされ、どのように伝えられているかに反応していることが示されています。
この状況は、組織にとって課題であると同時に機会でもあります。課題は、パフォーマンス向上の手段として「明確化」や「情報発信」に過度に依存してきた前提を見直す必要がある点です。不確実な環境において、完全な明確さを常に担保することは現実的ではありません。一方で機会は、つながり、信頼、主体性を強化する仕組みとリーダーシップ行動を設計できる点にあります。
そのためには、リーダーの認識と現場の実態とのギャップを埋めることが求められます。何が変わるのかだけでなく、なぜ変わるのかを説明すること。努力を継続的に認識すること。そして、従業員が自ら判断し、行動し、学習できる余地を確保することが重要です。
本調査が示しているのは、モチベーションは消失するものではなく、環境に応じて変化するという事実です。従業員が不確実性そのものによって離れていくのではなく、その中で自分の存在や貢献が認識されていないと感じたときに、エンゲージメントは低下します。
リーダーの行動がチームの日常的な経験と整合したとき、モチベーションは維持されるだけでなく、むしろ強化されていきます。
原文:The Surprising Truth About Motivation During Uncertainty
執筆: Janelle Beck, Senior Copy Editor & Tracey Carney EdD, Research Manager
出典:WILEY Workplace Intelligence|Everything DiSC®(2026年4月24日公開)
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現在、日本では主に以下の4つのアセスメントを提供しております:
- Everything DiSC®:対人関係と行動傾向を可視化し、組織内のコミュニケーションを促進
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2026年04月28日
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