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変化の時代に立ち向かう──AI時代のマネジメントに必要な5つの視点

原文:Navigating the AI Era: Five Key Insights for Managing Change

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ここ数年、「変化」という言葉を耳にしない日はないほど、私たちの働く環境は激しく移り変わっています。かつては予測可能だった職場のあり方も、今ではまるで天気のように不安定で読めなくなりました。「新しい日常」が安定してきたかと思えば、市場が揺れ、方針が変わり、次の四半期には新たな試練がやってくる──そんな繰り返しのなかで、多くの人が息をつく暇もなく変化に追われています。

こうした動きの背景には、経済的な要因に加えて、技術革新の加速があることも無視できません。Excelの使い方に四苦八苦していた時代は過去のものとなり、今や生成AIが、過去データに基づいた5年先の財務予測や、製品スケジュールに応じたマーケティング戦略まで提案してくれる時代です。

とはいえ、その技術の進化を実感できていない人も少なくありません。Excelで「セル内改行ってどうやるの?」と悩んでいた頃を思い出せば、なおさらかもしれません。しかし、優先順位が変わり、予算が縮小され、仕事量が増えていくなかで、この新たなテクノロジーを理解し使いこなすことは、多くの企業にとって最優先事項となっています。

では、日々の業務に向き合う従業員たちは、この変化のなかで何を感じているのでしょうか。変化に対する疲労感(チェンジ・ファティーグ)は深刻な課題であり、WILEY Workplace Intelligenceでは、1,685名を対象に、現時点でのストレス状況、最も影響を受けている層は誰なのか、そしてリーダーにできる支援とは何なのかを明らかにするために調査を実施しました。

本記事では、その調査結果から導き出された「AI時代における変化対応力」を高めるための5つの重要なインサイトをご紹介します。

組織が直面する「変化の連鎖クライシス」

変化のスピードは容赦なく加速しています。実に67%の回答者が「今後さらに多くの変化が訪れる」と予測しており、従業員が前の変化から立ち直る暇もなく、次の混乱に飲み込まれる「変化の連鎖(カスケード)クライシス」が生まれています。

まるで、波のプールで息継ぎをする間もなく次の波が押し寄せるような状態です。この絶え間ない変化の波は、人々に確実に負担をかけています。35%の回答者が「深刻なストレス」を感じていると回答しました。

67%が、近い将来さらに変化が起きると予測

こうした「終わりのない変化」と「ストレスの高まり」が組み合わさることで、チェンジ・ファティーグ(変化疲労)のリスクが高まっているのです。常に「受け身」の状態に置かれた従業員は、柔軟に対応したり、新たな価値を生み出したり、安定した成果を上げたりすることが難しくなってしまいます。

組織が変化を管理するということは、単に新しいシステムを導入することではありません。回復とレジリエンス(しなやかな再起)のための「余白」をつくることが、これまで以上に重要になっているのです。

ミドルマネージャーが「リーダーシップの板挟み」に

変革を成功に導く鍵を握っているのは、しばしばミドルマネージャーです。しかし私たちのデータによると、彼らは現在、非常に大きなプレッシャーにさらされています。

実に52%のマネージャーが「チームを変化に対応させる責任を担っている」と感じている一方で、上層部から十分なサポートを受けていると答えたのはわずか45%にとどまっています。このギャップにより、マネージャーは必要なツールや支援を欠いたまま、変革の先導を求められるという困難な立場に置かれているのです。

52%のマネージャーが「変革の推進は自分の責任」と感じているが、支援は不十分。

興味深いことに、マネージャーにとって最大の課題は「部下の抵抗」ではありません(これを挙げたのはわずか13%)。むしろ問題は、明確な情報の不足と、適応と生産性の両立に対する苦労にあります。

これらの結果は、組織がマネージャーに対して、明確な指針・必要なリソース・そしてチームを導くための十分な権限を与えることの重要性を示唆しています。

変化の中で最も求められるのは「コミュニケーション」

変化の渦中において「最も必要なものは何か?」という問いに対し、41%の従業員が「明確なコミュニケーション」と回答しました。これは役職や業種、変化の種類を問わず、最も多かった回答です。この結果は、いかに洗練された変革戦略であっても、透明性と一貫性のあるメッセージがなければ失敗するという、強力な警鐘でもあります。

明確なコミュニケーションは、変化の背景(“なぜ”変わるのか)、自分に何が期待されているのか、どのような支援が受けられるのかを理解する助けとなります。これにより不確実性が軽減され、信頼が築かれ、エンゲージメントも高まります。

特にAIの導入といった未知への不安がつきまとう状況においては、その重要性がさらに増します。組織は、変化のあらゆるフェーズにおいて「明確さ(clarity)」を最優先する姿勢が求められているのです。

AIへの準備はできている──しかし組織の支援体制が追いついていない

朗報もあります。従業員の多くはAIに対して前向きです。実に68%が「AIに対してワクワクしている」または「興味がある」と回答し、44%はすでに週に1回以上利用しているとしています。このような熱意は、企業がAIの可能性を最大限に活用するうえで、大きなチャンスと言えるでしょう。

68%の従業員がAIに興味をいだいている。

しかし、課題もあります。多くの企業がその熱意に追いついていないのです。回答者の3分の1(33%)は、自社にAIに関する方針があるかどうかも分からないと答え、30%は、自社がAI活用をどう捉えているのか分からないとしています。これは、従業員の準備状況と組織側の支援との間にギャップがあることを示しており、見過ごせないリスクです。

AIを組織にうまく統合するには、単なる熱意だけでは不十分です。企業は明確な方針の策定実践的な研修の提供、そしてAIを変革マネジメントの全体戦略に組み込むことが求められます。

研修アプローチの根本的なミスマッチ

変化が常態化しているにもかかわらず、「変化に向き合うための体系的な研修を受けている」と答えた人は、わずか18%にとどまりました。一方で、76%が「そうした研修には価値がある」と考えています。このギャップは、組織における構造的な課題を浮き彫りにしています。つまり、個別の変化にはそこそこ対応できているものの、継続的かつ累積的な変革に向けた従業員の準備ができていないのです。

必要なのは、単なる「チェンジマネジメントの技術向上」ではありません(もちろんそれも重要ですが)。それ以上に求められているのは、組織文化そのものの変革です。具体的には、ミドルマネージャーに裁量を与え、支援体制を整備し、現在の変化と将来的なAI導入について明確にコミュニケーションする──そんな「変化に強い文化」を育てることが重要です。つまり、受け身のチェンジマネジメントから、能動的なチェンジリーダーシップへの転換が求められているのです。

AIの時代は、私たちが準備できていようがいまいが、すでに始まっています。そしてこの先には、さらなる「前例のない変化」が待っています。調査結果からも、従業員はイノベーションに前向きである一方、その変化のスピードと量に圧倒されていることがわかっています。こうした環境をうまく乗りこなすためには、組織は包括的なチェンジアプローチを取らなければなりません。

変化に強い文化をつくるための4つのポイント

  • 変化の合間に、回復する余白(スペース)をつくる
  • マネージャーを支援するために、明確な情報とリーダーシップの後ろ盾を提供する
  • コミュニケーションを戦略的なツールとして重視する
  • AIへの熱意を、組織としての備えと整合させる

変化そのものは避けられませんが、疲弊・混乱・抵抗感は、防ぐことができます。こうした基本的なニーズに向き合うことで、企業は「AIに対応できる人材」だけでなく、「今後どんな変化にも柔軟に対応できる人材」を育てることができるのです。
…とはいえ、Excelの使い方を覚えるのは、いまだに難解なままかもしれませんが。

原文:Navigating the AI Era: Five Key Insights for Managing Change
執筆:Janelle Beck, Senior Copy Editor & Tracey Carney EdD, Research Manager
出典:WILEY Workplace Intelligence|Everything DiSC®(2025年8月22日公開)

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現在、日本では主に以下の4つのアセスメントを提供しております:

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2025年08月26日

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