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なぜ「建設的な対立」が健全な職場には欠かせないのか

原文:Why Constructive Conflict Is Key to Thriving Workplaces

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多くの人が、職場での対立を「避けるべきもの」として扱ってきました。しかし、心理的安全性が重視される今、健全な対立こそが信頼関係を育み、チームを強くする鍵であることが明らかになってきています。Wiley社の最新調査によると、心理的に安全だと感じている人でも、実際には8割以上が「対立に向き合うのは難しい」と感じているという驚きの結果が。

大切なのは、対立を恐れず、前向きな対話に変えるスキルと文化を育むこと。この記事では、「対立」を生産性とエンゲージメントの源に変えるヒントをご紹介します。


多くの人が、特に職場においては、対立をできる限り避けて生きています。対立は、避けるべきものとして長らく悪いイメージを持たれてきました。しかし、敬意・誠意・信頼のある環境で、誠実かつ率直に対立に向き合う方法を学ぶことができれば、その違いが「健全な組織文化」と「有害な職場環境」との分かれ道になります。対立にどう対応するかは、生産性や従業員のウェルビーイングに直結するのです。

Wiley Workplace Intelligenceでは、現在の職場において対立がどのような役割を果たしているのかを深く理解するために調査を実施しました。経済的不確実性や、社内外のさまざまな課題に直面している現代の組織では、対立との向き合い方がかつてないほど重要になっています。私たちは1,519名を対象に、対立への対処方法についてアンケートを行いました。調査では、心理的安全性が高いと感じている人が多い一方で、「職場での対立に関わるのは難しい」と感じている人がさらに多いという、意外な結果が明らかになりました。そこからは、対立という歴史的にタブー視されがちなプロセスを、組織としてどう改善できるかについての明確な指針も浮かび上がってきました。

心理的安全性のパラドックス

今回の調査では、72%の従業員が「同僚との対立に対処する際、心理的に安全だと感じている」と回答し、76%が「異なる意見を表明することに抵抗はない」と答えました。一見するとポジティブな結果に思えますが、掘り下げてみると複雑な実態が見えてきます。

実に88%の人が、職場での対立に関わることを難しいと感じており、41%は対立時に「自分がどう思われるか」を気にしているのです。

この矛盾は、人間的な反応でもあります(職場での立ち位置や印象を気にしたことがない人はいないでしょう)。同時に、組織には「対立をどう扱うか」についての明確な方針が必要だということを示しています。心理的に安全だと感じられることは重要ですが、それだけでは不十分であり、「建設的な対立を実際にどう進めるか」という実践的なスキルが求められているのです。

対立を避けることの隠れた代償

私たちはこれまでにも、職場における極度のストレスとそれが心身に与える影響について論じてきました。対立の扱いも例外ではありません。今回の調査でも、対立に起因する深刻なメンタル・身体的な影響が明らかになりました。

なんと67%が、勤務時間外にも職場の対立について考え続けてしまうと回答し、53%がストレスや疲労といった身体的な症状を感じていると報告しています。

こうしたデータは、解決されない、または不適切に扱われた対立が、感情面・身体面にどれほど大きな負担をもたらすかを物語っています。人々が対立に建設的に向き合うためのツールを持たないままでは、職場は「成長の場」ではなく「不安の源」となり、離職、組織文化への悪影響、ひいては業績への影響にもつながりかねません。リモートワークの復帰指示(RTO)や予算制約など、変化の激しい職場環境の中でこそ、「建設的な対立」を歓迎する文化を育むことが不可欠なのです。

対立に向き合うカギは「信頼」

信頼は健全な組織文化の土台であり、対立に関わる意欲を左右する最も強力な要因の一つです。今回の調査では、77%の従業員が「親しい同僚になら、難しい話題も持ちかけやすい」と回答しており、70%は「相手が過去に対立をどう扱ったか」によって、今後も対話できるかどうかを判断すると答えました。

つまり、信頼関係が築かれていればいるほど、対立も前向きなものとして扱えるのです。冷静で実直な態度で対立を扱い、相手が尊重され、声が届いていると感じられることが、再び対話の輪に入っていくための前提になります。

また、対立における「安心感」を左右する要因としては、①互いに敬意を払っていること、②共通理解があること、③信頼関係が構築されていること──この3つが最も重視されています。こうした要素があれば、人は「不快さを乗り越えてでも、前に進もう」とする意欲を持つようになります。結果として、チームの関係性も組織の成果も、より良いものへと進化していくのです。

「建設的な対立」がもたらす恩恵

対立に適切に向き合えたとき、その後の関係性やチームの成果にはポジティブな変化が見られます。36%の従業員が「対立を乗り越えることで、関係性がより強くなった」と回答し、68%は「対立を通じて、チームとしてより良い成果が出せた」と答えています。

これは、「対立は組織を壊すもの」という見方が誤解であることを示しています。むしろ、適切に対処できれば、対立は深い理解、より良い意思決定、そして強い協働を生み出す「変化の起点」になり得るのです。

建設的な対立文化を育てるために

では、組織として「対立を前向きに扱う文化」を育てるにはどうすればよいのでしょうか。以下のような取り組みが有効です。

1.対立対応スキルのトレーニングに投資する

従業員が困難な会話を乗り越えるための実践的なスキル──アクティブ・リスニング(積極的傾聴)、感情のセルフコントロール、個人のスタイルに合わせたフィードバック手法──を学べる機会を提供しましょう。

2.意見の違いを「当たり前」とする文化をつくる

リーダーが対立を恐れず、オープンかつ脆弱さを見せながら対話する姿勢を示すことで、「対立=悪」ではないというメッセージを組織全体に広げていきましょう。

3.信頼関係を構築する機会を日常に

高リスクな場面以外での雑談や関係構築の場を意図的につくり、安心して本音を語れる関係性を育みましょう。

4.コミュニケーションスタイルの共有を習慣化する

チーム内で「どういう伝え方・受け取り方が心地よいか」について話し合うことで、誤解や摩擦を減らし、共感を育む土壌が整います。

対立は避けられないものですが、必ずしも破壊的である必要はありません。対立に向き合うスキルと、信頼と尊重の文化があれば、組織は人の可能性を最大限に引き出すことができます。目指すべきは、対立を消し去ることではなく、それを「つながり・創造・共同の原動力」へと変えていくことです。

原文:Why Constructive Conflict Is Key to Thriving Workplaces
執筆:Janelle Beck, Senior Copy Editor & Tracey Carney EdD, Research Manager
出典:WILEY Workplace Intelligence|Everything DiSC®(2025年6月23日公開)

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HRDは、米国Wiley社と日本国内における独占販売契約を締結しており、同社が提供する各種アセスメントの日本語版開発および総販売代理権を保有しています。

現在、日本では主に以下の4つのアセスメントを提供しております:

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2025年06月23日

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