DiSC®︎を活用した組織風土改革、 リーダー育成,心理的安全性を高める組織開発ならHRD

管理職の燃え尽き症候群
──2025年に起こる「マネージャー崩壊」をどう防ぐか

原文:Boss Burnout: How to Prevent the Impending Manager Crash of 2025
執筆:Janelle Beck, Senior Copy Editor & Tracey Carney EdD, Research Manager
翻訳:HRD株式会社

記事をシェアする

2025年、私たちが直面しているのは「個人の能力の限界」ではなく、「構造が人を壊す時代」です。
とりわけ管理職は、会議・調整・レポートに追われる日々のなかで、誰よりも孤独に、誰よりも燃え尽きています。

Wiley社が実施した最新の調査では、「週に15時間以上を会議に費やしている管理職の60%が、深刻なストレスを訴えている」というデータも明らかになりました。

本記事では、この調査レポートの内容をもとに管理職の疲弊の背景を掘り下げ、企業においてそれをどう防ぎ、どう支援できるか──組織開発の視点から読み解きます。

原文:Boss Burnout: How to Prevent the Impending Manager Crash of 2025 | Everything DiSC
出典:WILEY Workplace Intelligence|Everything DiSC®(2025年2月20日公開)

慢性的なストレスが私たち全員に影響を及ぼしている──これは、もはや驚くべきことではありません。前回、私たちはストレスが生産性に与える隠れたコストに焦点を当て、従業員全体に広がる問題であることを明らかにしました。そしてその中でも、最も深刻な影響を受けている層が「管理職」であることが分かりました。彼らは、まさに「崩壊」に向かっています。

多くのマネージャーにとって、いまや「仕事=ストレス」という等式が成り立っています。一方では、チームメンバーたちが、締切の厳格化、優先順位の変動、報酬やインセンティブの減少といった現実の中で、倦怠感や不満、疲弊感を強めています。他方で、上司や経営層も、常に変化する状況下での戦略立案に苦しんでいます。こうした板挟みの状況が、マネージャーたちのストレスをさらに増幅させているのです。

このように、ストレスが一時的な不調ではなく、組織全体を蝕む「慢性疾患」として定着しつつあるいま、この危機は放置できないものとなっています。経営者がその自覚を持っていようがいまいが、マネージャーたちは確実に、限界に向かって進んでいるのです。

マネージャーのストレス増加の実態

調査結果:95%がストレスを実感

ワイリーワークプレイスインテリジェンスでは、こうした悪化の背景にある要因と、マネージャーたちがいま本当に必要としている支援について明らかにするため、調査を実施しました。

その結果、2,360名の回答者のうち、47%のマネージャーが深刻なストレスを抱えており、過去6か月でストレスが増加した人は全体の31%に上ることがわかりました。

不安定な経済、政治の激動、国際情勢の混迷といった要因によって、多くの組織が足元をすくわれ、人員・予算・時間などあらゆる資源が不足し、そのしわ寄せが人に押し寄せています。

深刻なストレスに悩む36%

ストレスを感じていると回答した95%の人のうち、36%が深刻なレベルにあると回答しました。全回答者の半数が、過去6ヶ月間にストレスが著しく増加したと回答しています。これには様々な理由が考えられます。政治の世界における大きな変化、最近の職場復帰への追い風、経済不安による組織の急速な優先順位の変更など、すべてが日々のウェルビーイングに影響を与える緊張した環境の原因となっているのです。

直近6カ月でストレスが増加した人は全体の31%に上る

ストレスを加速させる3つの要因:

  1. 業務量の増大
  2. 時間管理の難しさ
  3. 人員の問題

これらに加えて、期待が不明確であること、過度なプレッシャー、そしてコミュニケーション不全も大きな要因です。

また、60%が「官僚的な手続きや面倒な承認プロセス」がストレスを増幅させていると回答しています。これは、より機動的な意思決定が求められているサインとも言えるでしょう。責任が増し、締切がタイトになる中、経営陣が柔軟な対応を欠くことで、現場の疲弊を加速させているのです。

慢性ストレスの見えない悪影響

ネガティブに聞こえるかもしれませんが、現実として、マネージャーに過剰な負荷をかけ続けることには深刻な代償があります。Apple TVのドラマ『Severance』のような非現実の世界ではなく、これはプライベートと仕事のストレスが衝突する現実世界の話です。

当初は、「マネージャーならこのくらい耐えるのが当たり前」という認識があるかもしれませんが、この過剰な期待こそが、燃え尽きを引き起こします。慢性的なストレスは、脳のパフォーマンスを低下させ、記憶・判断力・問題解決能力に悪影響を及ぼし、結果として生産性を鈍化させます。

また、コミュニケーションの断絶も引き起こします。誤解や摩擦が増え、チームの連携は崩れ、やがて組織全体の健全性が損なわれます。

さらに悪いことに、こうした危機の中でまず削られるのが「支援」や「研修」など、マネージャーの回復力を支えるリソースなのです。

ストレスが高まる中でもマネージャーの士気を保つ3つの方法

  1. 1on1ミーティングを定期的に実施する
  2. マネージャー同士のつながりを促進する
  3. 部門全体での「傾聴セッション」を設ける

一筋の光──それでも希望はある

このような困難の中でも、すべてが暗い話ばかりではありません。

多くのマネージャーは、今後3〜6か月間はさらにストレスが悪化すると予測しながらも、1年後には状況が改善するという希望を持っていることがわかりました。

その根拠は明確ではありませんが(極度のストレス下では「楽観主義」は生存本能とも言われます)、この希望は企業にとっての投資チャンスでもあります。いまこそマネージャー支援に投資することで、「崩壊」を未然に防ぎ、持続可能な組織づくりへとつなげることができるのです。

マネージャーの「崩壊」を防ぐために、組織ができること

調査によれば、78%のマネージャーが自社の未来に対して前向きです。その期待に応えるために、以下の5つの支援策が有効です。

1. 職場の「心理社会的リスク」を評価し、軽減する

心理社会的リスクとは、職場における精神的・社会的な健康を損なう要因です。責任の曖昧さ、過剰な業務、コミュニケーション不足などが含まれます。まずはマネージャーとのコミュニケーション頻度を増やすことから始めましょう。

2. リーダーシップ研修を提供する

調査では、マネージャーの約半数が管理職としての正式な研修を受けていないと答えています。対人スキル、レジリエンス、動機づけ、衝突解決など、実践的なスキルを高める研修が必要です。

3. 明確な業務プロセスを整備する

アジャイルを妨げるものに見えるかもしれませんが、明確な業務プロセスはストレスを減らす有効な手段です。何を・いつ・どうやるかが明確になれば、安心感が生まれます。

4. アップスキリング(能力の拡張)を支援する

再編や業務拡張が続く中、マネージャーには新たなスキルやツールが必要不可欠です。役割が曖昧になる中、アップスキリングは単なるバズワードではなく、組織を守る現実的な手段です。

5. オープンな対話を奨励する

組織が困難に直面すると、真っ先に失われがちなのが「対話」です。マネージャーが安心して悩みを言語化できるように、上司との信頼関係と対話の場を確保することが鍵になります。

2025年の「マネージャー崩壊」を未然に防ぐことは、組織文化・離職率・業績に大きな差をもたらします。マネージャーは生産性、チームの士気、職場文化の要です。彼らの支援こそが、持続可能な未来の基盤となるのです。

組織文化とは、マネージャーから始まります。

WILEY Workplace Intelligence 翻訳記事一覧はこちら


HRDとWiley社のパートナーシップについて

HRDは、米国Wiley社と日本国内における独占販売契約を締結しており、同社が提供する各種アセスメントの日本語版開発および総販売代理権を保有しています。

現在、日本では主に以下の4つのアセスメントを提供しております:

  • Everything DiSC®:対人関係と行動傾向を可視化し、組織内のコミュニケーションを促進
  • ProfileXT®:職務適性を測定し、採用・配置・育成の精度を高める統合型アセスメント
  • CheckPoint 360°™:リーダーの現状と課題を多面的に捉える360度フィードバックツール
  • Organizational Alignment Survey:組織の一体感・方向性の共有度合いを測定するサーベイ

またHRDでは、Wiley社からの最新の調査レポートやグローバル動向を継続的にキャッチアップし、日本のビジネス現場に向けて発信・解説する取り組みも行っています。アセスメントの活用にとどまらず、人的資本経営・組織開発の最前線を共有し続けることが、私たちの使命の一つです。

※日本語版以外のご提供も当社にて可能です。詳しくはお問い合わせください。
※当社はWiley社より「2024 Platinum Award Winner」を獲得しています。本アワードは、全世界のパートナー企業のうち上位1%のみに贈られる名誉ある賞です。

We are proud to have received the “2024 Platinum Award” from Wiley. This prestigious honor is awarded to only the top 1% of Wiley’s partner organizations worldwide.


※本記事の著作権は米国Wiley社が保有しています。
※記事の内容、画像、図表などの無断転載・無断使用を固く禁じます。引用される場合は、出典を明記の上、適切な範囲でご使用ください。

Copyright Notice
※This article is copyrighted by John Wiley & Sons, Inc.
※Unauthorized reproduction, use, or redistribution of any part of this article—including text, images, or diagrams—is strictly prohibited. When quoting, please clearly indicate the source and ensure usage is within appropriate and fair limits.

2025年06月06日

記事をシェアする

Everything DiSC®紹介資料

本資料では、Everything DiSC®がもたらす体験や対人関係についての尺度、組織カルチャーの共通言語となる特徴についてご説明し、併せて学術的背景、DiSC®理論概要、レポート詳細、活用事例などをご紹介しています。

資料をダウンロード

企業研修、コンサルティング、
人材アセスメントの
ご依頼・お問い合わせはこちら

ご依頼・お問い合わせ 03-6777-7636

営業時間 平日 9:00 - 18:00

サービス事例や業務に役立つ資料を
ご用意しております

資料をダウンロード