
組織文化を強くする「建設的フィードバック」の力
原文:The Power of Constructive Feedback in Organizational Culture | Everything DiSC
執筆:Janelle Beck, Senior Copy Editor & Tracey Carney EdD, Research Manager
翻訳:HRD株式会社
リモートワークの普及、経済不安、人材不足──変化と不確実性が渦巻く時代に、職場には“建設的な対話”がますます求められています。
本記事では、ワイリーワークプレイスインテリジェンスの調査をもとに、「フィードバック」が職場の信頼・心理的安全性・成長意欲に与える影響を解説。
特に、管理職のスキル育成やフィードバック文化の定着が、組織の一体感とレジリエンスをどう高めるかに迫ります。
原文:The Power of Constructive Feedback in Organizational Culture | Everything DiSC
出典:WILEY Workplace Intelligence|Everything DiSC®(2025年5月23日公開)
いま、私たちはまたひとつの転換点に立っています。 急激な文化変化、優先順位の揺れ、そして不安定な雇用市場──。 「何とか安定を保ちたい」という空気のなかで、職場全体がピリついているのを感じる方も多いのではないでしょうか。
そんな状況で「フィードバックのやりとり」など、避けたくなるテーマかもしれません。 けれども実は、建設的なフィードバックのスキルこそが、この不安定な時代をしなやかに乗り越える鍵になる可能性があります。
経済不安が続くなか、「少ないリソースで、より多くの成果を求められる」状況が常態化しています。 ひとりが複数人分の仕事を担うような場面も珍しくありません。
こうした現実を直視したとき、必要になるのは率直で信頼に基づいた対話です。 パフォーマンス、チームの関係性、業務量といったテーマを、きちんと話し合える力が求められています。
建設的フィードバックは、健康的でエンゲージメントの高い職場文化に欠かせない要素です。 ワークプレイスインテリジェンスでは、このテーマに関する2,000名の声を集め、フィードバックの頻度と「支援されている感覚」や「改善につながる実感」との相関について調査を行いました。
フィードバックが「足りていない」現実

調査の結果、週1回以上フィードバックを受けている人の92%が「上司から支えられている」と感じているのに対し、年1回程度の人ではその割合が59%にとどまることがわかりました。
この差は、単なる頻度の問題ではありません。
継続的なコミュニケーションは、信頼・明確さ・評価されている実感につながるのです。
こまめなフィードバックによって、
- 小さな成果に気づける
- パフォーマンスをタイムリーに修正できる
- 自分の存在が認識されていると実感できる
といったメリットが生まれます。
一方で、年に1回の評価面談だけでは、声かけのタイミングを逃しやすく、「形だけのやりとり」として距離を感じさせてしまうことも。
加えて、週次でフィードバックを受けている人の53%が「具体的な行動改善につながっている」と回答しており、変化の激しい現代においては、こうした機動力がますます重要になっています。
「信頼」を育む文化とフィードバック
建設的なフィードバックが定期的に行われることは、心理的安全性と信頼感の土台になります。
フィードバックを受ける側にとって、「自分の行動が見られている」「貢献が認識されている」という感覚は、不安な時期にこそ、大きな励みになります。
この安定した対話の積み重ねによって、
- 自由に発言できる
- 質問できる
- 自発的に動ける
という健全なチーム環境が育ち、成功体験の共有や改善行動の積み重ねが可能になります。
さらに重要なのは、相手のパーソナリティスタイルに応じて伝え方を調整することです。
- 行動重視型には、結論と行動を明確に
- 共感重視型には、背景や気持ちに寄り添って
といったアプローチの工夫によって、「フィードバック」が「批判」ではなく「成長のための対話」として受け取られるようになります。
これにより、学習意欲が高まり、責任感と相互尊重の文化も醸成されていきます。
ストレスの水準は依然として高い

調査では、過去1か月の間に96%が「高いストレスを感じている」と回答。
特にマネージャーのストレスは10点満点中7.0(前年同月比+0.5)に上昇しており、不安定な環境がストレス水準を押し上げ続けていることが示されています。
こうした状況のなかで、率直で建設的な対話を文化として根づかせることは、チームの結束を保つひとつの手段になります。
信頼と成長意欲に根ざしたフィードバックは、職場内のつながりや相互理解を促進し、厳しい時代を乗り越える力にもなり得るのです。
マネージャーの心構えと「フィードバックスキル研修」の重要性
建設的なフィードバックを通じて組織文化を良くするには、何よりもマネージャーのスキルと心構えが重要です。
実際、適切な研修を受けたマネージャーは、以下のような場面で明らかに成果を上げています:
- フィードバックの準備ができている
- 相手に応じて伝え方を調整できる
- 対話によって行動改善につなげている
つまり、フィードバックは単なる「やるべきこと」ではなく、人材育成や信頼構築のための戦略的ツールであるという認識が浸透しているのです。
一方で、未研修のマネージャーは、「大事だとは思っているけど自信がない」と感じており、
実践的なコツやトレーニング、コーチングの必要性を訴えています。
支援がなければ、フィードバックは:
- 一貫性を欠く
- タイミングを逃す
- 誤解や不信感を生む
といった「逆効果」になりかねません。
研修を受けたマネージャーこそが、組織の土台をつくる存在なのです。
「フィードバックが根づく文化」を育てるには
建設的なフィードバックを組織に根づかせるには、以下のようなアプローチが有効です:

定期的なフィードバックを“当たり前”にする
年1回の評価だけでなく、日常のなかで声をかけ合うことを奨励する

マネージャー向けのフィードバックスキル研修を実施する
対話の設計と伝え方の引き出しを増やする

パーソナリティ診断ツールを活用する
個人ごとの受け取り方の違いを理解し、適切な伝え方を学ぶ
定期的なフィードバックは、単なる評価手段ではありません。文化を育てる行為そのものです。
この対話が根づくことで、人材の成長だけでなく、組織の一体感や信頼も育まれていきます。
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HRDとWiley社のパートナーシップについて
HRDは、米国Wiley社と日本国内における独占販売契約を締結しており、同社が提供する各種アセスメントの日本語版開発および総販売代理権を保有しています。
現在、日本では主に以下の4つのアセスメントを提供しております:
- Everything DiSC®:対人関係と行動傾向を可視化し、組織内のコミュニケーションを促進
- ProfileXT®:職務適性を測定し、採用・配置・育成の精度を高める統合型アセスメント
- CheckPoint 360°™:リーダーの現状と課題を多面的に捉える360度フィードバックツール
- Organizational Alignment Survey:組織の一体感・方向性の共有度合いを測定するサーベイ
またHRDでは、Wiley社からの最新の調査レポートやグローバル動向を継続的にキャッチアップし、日本のビジネス現場に向けて発信・解説する取り組みも行っています。アセスメントの活用にとどまらず、人的資本経営・組織開発の最前線を共有し続けることが、私たちの使命の一つです。
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2025年06月06日

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