2025年・注目すべき10のインサイト――ストレス、変化、そして「人がもつ力」
原文:Top Ten Insights from 2025: Stress, Change, and the Power of People
変化が常態化し、プレッシャーが高まり続けた一年を振り返る中で、ひとつはっきりしたことがあります。
職場は単に「進化」しているのではなく、リアルタイムで形を変え続けているということです。
この1年、Wiley Workplace Intelligenceは、人々の声に丁寧に耳を傾け、データを深く分析し、そこから得られた学びを、組織が持続的に成長していくための実践的なインサイトへと翻訳してきました。
ここに紹介するのは、2025年に得られた10の主要な知見です。
人の経験に根ざし、データによって裏づけられたこれらのインサイトは、新しい年を迎えるにあたり、私たち一人ひとりが、より明確さとコンパッション(思いやり)をもってリードすることを促しています。
ストレスは「限界点」に達した
2025年は、職場におけるストレスが、繁忙期に一時的に生じる反応ではなく、仕事体験そのものに組み込まれた状態へと変わった年でした。従業員の実に95%が「強いストレスを感じている」と回答し、そのうち36%は「深刻なレベル」だと答えています。
これは単なる感情的な負担ではありません。生産性、エンゲージメント、集中力を確実に損なう、測定可能な影響が生じていました。多くの従業員は、「常にサバイバルモードで働いているようだ」と語り、立て直したり回復したりする余地がないと感じていました。
このメッセージは明白です。
ストレスはもはや「状況的な問題」ではなく、「構造的な課題」です。
燃え尽きた組織を生まないためには、企業はストレスを個人の問題ではなく、システムとして扱う必要があります。

36%の従業員が「深刻なレベルのストレスを感じている」と回答
マネジャーは「危機的水準」に達している
最も強いプレッシャーを感じていたのは、人を率いる立場にあるマネジャー層でした。
約47%が「深刻な燃え尽き状態にある」と回答しており、この数字は、どの組織にとっても立ち止まって考えるべき水準だと言えるでしょう。
彼らは、メンバーのウェルビーイングを支え、成果を出し、変化をマネジメントし、チームを育成し、新しいテクノロジーを導入することまで求められています。しかしその多くは、それらを持続的に担うための十分な支援やトレーニングを受けないまま、役割を背負わされています。
マネジャーは今、経営層からの期待と、現場の従業員が日々直面している現実とのあいだに広がるギャップの中で働いています。そして、マネジャーがつまずけば、その影響はチーム全体に及びます。
マネジャーのレジリエンスと能力開発は、もはや選択肢ではありません。組織の土台そのものです。

深刻な燃えつきを感じているマネージャー:47%
会議はストレスを「増減させる要因」になった
会議の量と負荷は、引き続き膨らみ続けていました。
週に15時間以上を会議に費やしている従業員では、圧倒されている感覚が急激に高まっていたのです。彼らは単に「忙しい」のではなく、認知的に消耗している状態にありました。
多くの人が、「実際の仕事を進める時間がない」と感じており、重要な業務を夜間や週末に回さざるを得ない状況に追い込まれていました。
この結果が示しているのは、ひとつの厳しい現実です。
会議は、適切に設計・管理されなければ、思考の明瞭さや意思決定の質を損なうということです。
目的、頻度(ケイデンス)、参加者の設計を含めた会議文化の再設計は、集中力を取り戻し、従業員の疲弊を軽減したいと考えるあらゆる組織にとって、もはや戦略的な優先課題となっています。

週15時間以上を会議に費やしている人の60%が、深刻なストレスを感じていると回答
頻度の高いフィードバックは「見えない支援システム」だった
このデータが示すことも非常に明確でした。
週次のチェックインや短時間の振り返り(デブリーフ)を取り入れているチームほど、強い支援を感じていたのです。
頻繁でインフォーマルなフィードバックを受けている従業員の92%が、「上司は自分を支えてくれている」と感じていました。一方、評価が年1回または半年に1回のみの従業員では、その割合は59%にとどまりました。
従業員の声から見えてきたのは、継続的な接点が心理的安全性を生み、期待値を明確にし、問題を「対処可能なもの」と感じさせていたということです。
不確実性に満ちた一年において、定期的なフィードバックは単にパフォーマンスを高めただけではありません。人を地に足のついた状態に保つ役割を果たしていました。
進むべき方向は明らかです。
小さな対話の積み重ねが、大きな安定を生み出します。

週次でフィードバックを受けている人の92%が「マネジャーから支えられている」と感じている
(年1回のフィードバックでは59%)
信頼があっても、健全な対立が自然に生まれるわけではなかった
信頼度の高い組織文化であっても、従業員の大多数(88%)は依然として対立を避けていました。
この結果は、重要な誤解を浮き彫りにしています。信頼があるだけでは、難しい対話は容易にならないということです。意見の相違を建設的に扱うには、スキル、言語、そして自信が必要です。
こうした土台が欠けていると、チームは沈黙や不満の蓄積、あるいは表面的な協働へと流れてしまいます。
健全な対立とは、衝突することではありません。
アイデアを表に出し、前提を問い直し、仕事を前進させるためのプロセスです。
2025年の調査から明らかになったのは、「対立を扱う力(コンフリクト・コンピテンス)」こそが、信頼と真のチーム成果をつなぐ欠けていたピースであるという事実でした。

対立を乗り越えたチームの68%が、より良い成果を生み出している
エンパワーメントのパラドックスが顕在化した
77%の従業員が「自分はエンパワーされている」と感じていると回答する一方で、その実態はより複雑でした。多くの人が主体的に動くことを期待されているものの、実際には意思決定の権限が与えられていなかったのです。この乖離は、フラストレーションや業務の停滞、イノベーションの停滞を生み出していました。
このギャップを埋めるには、エンパワーメントと「明確さ」をセットで設計する必要があります。
誰が何を決めるのか。人々にはどこまでの権限が本当に与えられているのか。
構造を伴わないエンパワーメントは、潜在力を無駄にしてしまいます。

意味ある権限を与えられた人は、主体的に行動する可能性が 2.8倍 高い
AIは好奇心と不安の両方を呼び起こした
2025年、AIの導入は一気に加速し、従業員は期待と不安が入り混じった反応を示しました。68%はAIの可能性に「ワクワクしている/関心がある」と回答した一方で、マネジャーの半数以上は、AI主導の変化を率いる準備ができていないと感じていました。
この「準備不足のギャップ」は大きな課題を生みました。従業員は、ビジョンや安心感をマネジャーに求める一方で、当のマネジャー自身が、AIが業務フローや期待値、パフォーマンスに何をもたらすのかを十分に理解できていなかったのです。
今、組織は重要な分岐点に立っています。
AIを「混乱の要因」ではなく「力を引き出す存在」にするためには、リーダーが知識だけでなく、変化を言語化し伝えるためのコミュニケーションスキルも備えている必要があります。

68%がAIに対して「ワクワクしている/好奇心を感じている」と回答
真に「良い状態」で働けていた人は、ごく一部だった
高いモチベーションを保ちつつ、ストレスも適切にコントロールできている――いわゆる「スイートスポット」に入っていた従業員は、わずか 17% にとどまりました。
多くの人は、燃え尽きている、意欲を失っている、あるいは持続不可能な負荷のもとで働いているなど、どこか一方に偏った状態に置かれていたのです。
この「スイートスポット」に近づくためには、支援の有無、役割や期待の明確さ、仕事の意味づけ、そして無理のない業務量――こうした要素の組み合わせが不可欠です。
この結果は、従業員体験を「一律の施策」として扱うことの限界を示しています。
組織には、人を動かす要因と消耗させる要因を、より立体的に理解する視点が求められています。

高いモチベーションと管理可能なストレス状態にある人は、全体の17%のみ
高い成果を生み出す原動力は「人間的スキル」だった
今年の調査は、これまでの研究結果をあらためて裏づけるものでした。
感情知性、効果的なリーダーシップ、そして対人スキルは、高い成果を上げるチームを最も強く予測する要因だったのです。
テクノロジーがどれほど進化しても、成果を分けたのは「使っているツール」ではなく、チーム内でどのような関係性や相互作用が生まれていたかでした。
心理的安全性、明確さ、信頼を育んでいたリーダーのもとでは、チームはより早く適応し、より良く協働し、安定した成果を出していました。
デジタル化が進む時代において、人と人とのつながりそのものが、競争優位性になっていることが明確になったのです。
高い成果を予測する上位2要因


2025年が示したのは、「成果は人から始まる」という事実だった
今回の調査結果全体を通して、ひとつの真実が際立って浮かび上がりました。
人が健やかに働けているとき、組織もまた力を発揮する――ということです。
急速な変化、働き方をめぐる複雑な議論、かつてないほど厳しいリソース環境。そうした状況の中で、人を中心に据えたリーダーシップこそが、パフォーマンスの土台となっていました。
信頼、明確さ、ウェルビーイング、そしてスキルに裏打ちされたコミュニケーション。これらはもはや「あれば望ましいもの」ではありません。仕事が成立するための前提条件なのです。
これからのパフォーマンスは、人からさらに効率を搾り出すことでは生まれません。人が本来の力を発揮できる環境を、いかに作れるかが問われています。
これらの示唆を総合すると、2025年の職場はひとつの分岐点に立っていることが見えてきます。ストレスや不確実性に満ちている一方で、可能性も確かに存在しています。
データが明確に示しているのは、成果・イノベーション・成長は、プレッシャーだけからは生まれないということです。それらは、支えられていると感じ、つながりを持ち、信頼されている人から生まれます。
2025年は、「基本に立ち返ること」の重要性を改めて教えてくれました。
マネジャーには、期待だけでなく支援が必要です。従業員には、権限付与だけでなく明確さが求められます。チームには、スキルだけでなく信頼が欠かせません。
そして組織には、テクノロジーやプロセス、戦略と同じ厳密さで、人という要素に投資する姿勢が求められています。
未来に向けた道筋は、決して複雑ではありません。しかし、それは意図的でなければなりません。
より健全なシステムをつくること。
現代の働き方の現実に即したリーダーを育てること。
対立が建設的に扱われ、フィードバックが継続的に行われ、
ウェルビーイングが「譲れない前提」として守られる文化を育むこと。
こうした原則に組織が本気で向き合ったとき、人はただ「耐える」のではなく、力強く成長していきます。
そして、人が成長するとき、パフォーマンスは自然と後からついてくるのです。
原文:Top Ten Insights from 2025: Stress, Change, and the Power of Peoplehttps://www.everythingdisc.com/blogs/top-ten-insights-from-2025/
執筆: Janelle Beck, Senior Copy Editor & Tracey Carney EdD, Research Manager
出典:WILEY Workplace Intelligence|Everything DiSC®(2025年12月12日公開)
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- ProfileXT®:職務適性を測定し、採用・配置・育成の精度を高める統合型アセスメント
- CheckPoint 360°™:リーダーの現状と課題を多面的に捉える360度フィードバックツール
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2025年12月16日
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